マンションや一戸建てといった不動産は、一生のうちに何度も買えない高額商品。
そのため多くの方が住宅ローンを組み毎月ローンを返済して不動産を取得しています。
住宅ローンを組むとどうしてもかかってしまうのがローン金利や住宅ローン保証料、団体信用生命保険などの経費。
ただ日銀のマイナス金利政策のため現在住宅ローンの金利は0.5%を割るケースも出てきており、ローン金利があまり負担にならない状況でもあります。
では不動産の購入、現金一括支払いがお得なのでしょうか?
それともローンを組んでの支払いがお得なのでしょうか?
考えてみたいと思います。


住宅ローンを組んで不動産を取得する場合、ローンに関係するさまざまな経費がかかります。
・住宅ローン金利…マイナス金利政策の現在、金利は約0.4~1.5%とかなりの低金利に
・ローン保証料…なんらかの理由でローンが払えなくなった場合に、保証会社にローン返済を立て替えてもらうための保証料
・団体信用生命保険の保険料…ローン完済できないうちに返済者が死亡、重度の病気になった場合、保険会社が返済者に代わってローンを返済するための保険料。毎月の返済金に上乗せされることが多い
・事務手数料(融資手数料)…事務手続き費用のため、申込時のみ必要
大きな費用は以上ですが、これら経費のほかにも印紙代や登記費用などがかかります。
住宅ローンに関係する諸経費のなかでも「ローン保証金」は借入金の2%前後の費用がかかるとあって高額に。
3,000万円の融資を受けようと思えば、約60万円のローン保証金が必要になってしまいます。
ローン保証金を無料にしている銀行を選ぶという対策のほか、ローン保証金を一括で支払う、頭金を入れて借入金額を抑えるなどの対策が有効です。
現金一括で不動産を購入する場合、これら住宅ローンに関する諸経費が丸々カットできるため大きな節約につながりますね。

新築一戸建てやマンション等の不動産を購入するとき、住宅ローンを利用するとどうしても「住宅ローンの申し込み・審査・仮承認・本審査・住宅ローンの契約・印紙手続き」などのプロセスが入り込んでしまいます。
一度の申し込みですぐに住宅ローンが組める場合はよいのですが、複数の銀行の審査に落ちてしまいなかなか融資してくれる銀行が見つからない、というケースも。
あちこちの銀行を渡り歩いて、結局金利の高い住宅ローンを組まざるを得なかったという話も聞きます。
住宅ローンに費やす時間をカットし、すぐに不動産を取得できるのが現金一括払いの大きなメリットです。

いいこと尽くしのように見える不動産の現金一括購入ですが、思わぬ落とし穴も。
全財産を不動産取得に注ぎ込んでしまうと、生活費やお子さんの教育費などの資金が不足する可能性があります。
とくに教育に関する費用は大きいため、お子さんが将来専門学校や大学、短大進学を目指している場合は、手元預金を全額住宅取得に使わない方がベスト。
また中古住宅をリフォームする、リノベーションする予定があるなら、無理な現金一括での不動産購入はおすすめできません。
今は空前の低金利時代。
住宅ローンを組めば0.5~1.5%でお金が借りられるケースもあります。
なくなった手元資金を補充するために、3%や5%などの高金利でお金を借りるようでは意味がありません。
現金一括での不動産購入にはメリットもありますが、まずは無理のない資金計画から考えてみましょう。

数千万円もの高額な不動産を現金で購入した場合、税務署から資金の出どころについて問い合わせがくることがあります。
コツコツ貯金をして貯めたお金であれば問題ないのですが、親族から資金を贈与してもらった場合は贈与税がかかる可能性があります。
贈与税は3,000万円ほどであれば課税が免除されるため、この金額までに抑えておけば問題ありません。


住宅ローンを支払っている方の負担を軽減させるための制度が住宅ローン控除で、年度末の住宅ローン残高、または住宅取得価格のうち、いずれか低い方の金額の1%が所得税から控除されます。
借入金3,000万円で返済期間30年、年収500万円、扶養家族3人、金利1.5%の方が住宅ローンを組み、住宅ローン控除を受けた場合、その減税効果は約295万円になります。
すまい給付金(50万円)が支給されると節税効果は約345万円になるのでバカにならない数字ですね。
もし、金利やローン保証金、団信保証料、融資手数料、事務手数料など諸経費が安い銀行を探せば、諸経費と控除金額で相殺されるケースもあり、住宅ローンが重荷にならずにすむことも。
まずはじっくりと住宅ローンについて調査し、どのような資金繰りをおこなえばもっとも節約できるのかを研究してみるのもよいですね。

住宅ローン金利には団体信用生命保険の保険料が加算されているケースが多いので、保険料を特別に気にすることはありません。
この保険は住宅ローンに特化しており、ローン返済者が死亡、または病気になり重い後遺症が残った場合などに、保険会社が代わりに住宅ローンを返済してくれる制度です。
この保険に入ることで一般の生命保険を解約したり契約内容を縮小することもでき、結果的に保険料の節約になります。

上記で説明したとおり、住宅ローンには金利はもちろん各種諸費用がかかってきます。
各銀行の金利や諸費用の設定などにもよりますが、3,000万円の融資額を30年で元金均等返済にすると、最終的にかかる金利と諸経費は600~650万円程度になります。
もちろん返済期間を20年に短縮すれば金利と諸経費は約400~450万円程度まで減らすことができますが、金利はゼロになりません。
住宅ローン控除やすまい給付金が受けられるメリットはありますが、実際にどれだけお得なのか事前にしっかり計算しておく方がよさそうです。

住宅ローンを組みには事前審査や仮承認、本審査、契約締結などいくつかのプロセスがあり、融資申し込みから融資実行まで約1か月程度かかります。
融資先が見つからないとさらに長い時間がかかってしまうため、スムーズな住宅取得が難しいことも。
ある程度期間にゆとりをもって融資先を探す方が、冷静に判断できるのでおすすめです。


不動産を現金一括で購入することにもっとも向いているのは、手元資金にゆとりがあり、不動産を購入しても当面必要な生活費や教育資金が潤沢にある富裕層の方です。
「お金がお金を呼ぶ」とでもいえましょうか。
しっかりとした資金計画は必要ですが、最初から資金にゆとりのある方ならそれほど心配はないはずです。

不動産購入額がもともと安く、生活に負担がかからないと思える方も現金一括で不動産を購入するのに向いています。
もちろん生活費や教育資金などに支障がないかどうかを確認するのは必須ですが、そもそも購入価格が数十万円程度の安価な物件なら現金購入でも問題ありません。
ただ安い住宅は大掛かりなリフォームやリノベーションが必要なので、それら資金を準備する必要があります。

不動産の購入には住宅ローンが有利なのか、それとも現金一括がよいのか?の結論ですが、やはり資産状況によるとしか言えない状況です。
手持ちのお金を不動産取得のためにすべて支払っても生活にゆとりがあるなら「現金一括購入」が、現金を不動産購入に充ててしまうと生活に困ってしまう場合は「住宅ローン」を選択するのがベストな選択になります。