一人暮らしの方にとって家賃も安く、お手頃で便利なワンルームのお部屋。
ところが2007年頃から、東京23区全域でワンルームマンションの建築に規制がかかっています。
少子高齢化や婚姻率低下(独身世帯増加)、外国人就労者の増加、都心への人口集中などでワンルーム物件人気が今後も高まる予想がありながら、なぜ東京23区でワンルーム規制がおこなわれるのでしょうか?
このページでは東京23区内でおこなわれているワンルーム規制の内容、その理由、そして今後の見通しなどをまとめています。
これから東京都23区内にワンルームマンション建設をお考えの方、23区内にワンルーム物件を借りようとお考えの方はぜひ参考にしてください。
「東京都のワンルーム規制条例」とひとことで括られていますが、じつは東京23区でそれぞれ規制が作られており、区内で統一されたルールはありません。
「ワンルーム新築マンション建設を抑制しよう」という基本的な方針に変化はありませんが、実際はそれぞれの区で規制内容が微妙に違っているのです。
例をあげてみていきましょう。
・新宿区…新宿区ワンルームマンション等の建築及び管理に関する条例
対象規模は地階を除く階数3以上の共同住宅、寮及び寄宿舎で30㎡未満の住戸を10戸以上
最低面積…25㎡以上 ワンルームの定義:30㎡未満
・台頭区…台東区集合住宅の建築及び管理に関する条例
対象規模は住戸数10戸以上の下宿、共同住宅又は寄宿舎
最低面積…25㎡以上 ワンルームの定義:40㎡未満
・江東区…江東区マンション等の建設に関する条例
対象規模は地階を除く階数が3以上で住戸数15戸以上かつ過半数以上が40㎡未満
最低面積…25㎡以上 ワンルームの定義:40㎡未満
区によってワンルーム規制に対する法令名称が違うのはもちろん、規制の内容にも差があるのがおわかりいただけると思います。
上記でチェックしたとおり、ワンルームの部屋の定義は区によって違いがあり、ワンルームの定義が30㎡未満の部屋であったり40㎡未満の部屋であるなど統一されていません。
もし1DKや2DKの部屋であっても40㎡未満(約25.83帖)の部屋であればワンルーム規制の対象にかかってしまいます。
「ワンルーム規制」だからワンルームの部屋がダメなのではなく、専有面積が重要なのです。
23区内のワンルーム規制では一棟丸ごと単身者向けのワンルームマンションにすることはできず、マンション内に一定数のファミリー向けの部屋を混在させなければならない、というルールもあります。
このようなルールによりまとまった土地がないと23区内でワンルームマンションを建築することができなくなり、現在は新規にワンルームマンションの建築がむずかしくなっています。
豊島区は他の区とくらべても単身世帯が多く住んでおり(全世帯の56%)、とくに厳しい条例で規制しなければワンルームマンションの抑制にはなりません。
そこで登場したのが30㎡未満の狭小住戸1戸につき50万円を課税(通称ワンルームマンション税)する新たな課税制度です。
課税期間は条例施行後5年ごとに見直しをおこないますが、この対策で豊島区内のワンルームマンション建築が一定数抑制されています。
ワンルームに住むのは学生や単身赴任の会社員、独身の方が多く、とくに学生や単身赴任者は数年でどんどん入れ替わる傾向にあります。
これらの方々は「長く地域に住み続ける」という発想がなく、地域住民との交流も少なく地域活性化にも興味がないため、住民として地域に定着しにくいのが実情です。
ほとんどの単身者がルールに則って生活しているのが実情ですが、なかにはゴミ出しのルールが守れない、ゴミを路上やマンション周辺に散らかす、深夜まで騒ぐ、お酒の飲みすぎでトラブルを起こす、自転車の放置など、マナーの悪い住人がいるのも確かです。
また単身者用マンションには外国人が多く住む傾向もあり、治安の悪化や言葉が通じないことによるトラブルも発生しています。
これらマナーや治安の問題から、単身者向けワンルームマンションに建築規制がかかっているという背景も。
単身者のなかには住民票を居住先に移さない方も多く、住民税の増加につながらないことが指摘されていました。
さらに2007年の税源移譲により地方自治体の財源が「法人税・住民税・消費税」へと変化し、長期にわたって安定した住民税を支払い続けるファミリー層や法人税収入が得られる法人を区内に呼びこむ方向へとチェンジ。
住民税の支払いが不透明な単身者よりも、安定した収入や長期間納税してくれるファミリー層を重視する政策へと転換した結果、ワンルーム(単身者向け住居)が規制されたのです。
東京23区内では、さまざまなワンルーム規制条例により新規のワンルームマンションが建築しにくい環境になっています。
とくに単身者の多い豊島区では平成16年に始まったワンルーム規制条例の効果が平成20年に発揮されており、4年間で約30%新築ワンルーム物件が減少しました。
新規のワンルームマンションを建築するためには最低面積をクリアし、さらに区によってはファミリー向けの部屋を混在させなければならず、条例施行前よりも広い面積の土地が必要です。
東京23区内はすでに多くが開発され尽くしており新たに土地を見つけることがむずかしく、今後も新築ワンルームマンションが建築しにくい状況に大きな変化はなさそうです。
単身者用ワンルームマンションが新規で建築されにくい状況ではあるのですが、現実はこれからさらに単身者用マンションのニーズが増えると予想されています。
とくに婚姻率低下で男女とも単身者が増えること、また外国人労働者が増えること、首都圏で働きたい地方の若者増加など単身者用ワンルームマンションの需要はさらに高まることが予測されています。
ファミリー向けマンションは広さにゆとりがあり快適に住めますが、単身者には広すぎるうえに家賃の負担が重くのしかかり現実的ではありません。
ワンルームマンションは多くの単身者に求められているのです。
東京23区内で新規の単身者用ワンルームマンションが建築しにくくなっているため、注目されているのが中古ワンルームマンションです。
築年数が経過したワンルームマンションでもリフォームがしっかりしていれば人気がありますし、古い建物は家賃も安く一定数のニーズが見込めます。
ワンルーム規制が今後どのような経過をたどるのか不透明な状況ですが、中古ワンルームマンションは希少価値があがり、投資用として注目される可能性もあります。
東京都内、とくに東京23区内は人や企業が多く集まりかなりの過密状態にあります。
そのため政府は都内にある法人の本社移転などを推奨しており、人口を東京都からほかのエリアへ移動させる政策を推進。
東京23区では2007年頃からワンルームマンションの新築規制(ワンルーム規制)条例が施行されており、新築ワンルーム物件が減少しています。
新築物件は減少していますが、ワンルームマンションに対するニーズは今後も増加が予想されており、中古マンションが注目され価格が上昇傾向に。
東京23区のワンルーム規制が今度どのように変化するか不透明な面はありますが、新規マンションが供給しにくい流れは今後も続くことが予測されます。