ペットを飼えるマンションも近ごろは増えましたが、まだまだ少ないのが現状です。
賃貸住宅はもとより、分譲住宅であっても「マンション規約」あるいは「管理規約」により飼えないところが多数を占めています。
ややこしいのですが、分譲というのはあくまでもマンションの区分所有であり、全体の所有ではありません。
規約に反してしまえば、東京高等裁判所などでも争われたことがありますが、「動物の飼育の全面禁止」規約には、有効性が認められています。
しかし、全てのマンションでペットが飼えないわけではなく、特に分譲マンション(分譲住宅)においてですが、ペットを飼えるところが増えています。
しかし、マンションの規約をよく見ると「ペット相談」と書いていたり、そうではなく「ペット可」と分けられて言葉が使われていることがわかります。
例えば、個人個人で「大型車」の定義・感覚は違うと思います。
多少大きいセダンでも、人によっては「大型車」と感じることもあるでしょう。
「大型車」には「車両総重量8t以上、最大積載量5t以上、乗車定員11人以上のいずれかに該当する」自動車という、明確な定義があります。
しかし、マンション規約における「ペット可」「ペット相談」には、統一された定義がありません。
しかし、「ペット可」及び「ペット相談」に違いがないわけではなく、多少恣意的・主観的ではあっても、線を引くことはできます。
分譲住宅であれば、「ペット可」となっている建物は少なくありませんが、例え「ペット可」であっても、無制限に動物を飼えるわけではありません。
また「ペット可」でも、どのようなペットでも飼えるわけではありません。
多くの場合は、「猫一匹」「小型犬一匹」「中型犬一匹」が許可されていますが、それ以上になると厳しくなります。
マンションで多頭飼育ができないわけではありませんが、その場合は数少ない「多頭飼育可」「多頭飼育応相談」物件を探す必要があります。
また、犬は良くとも猫の飼育が禁止されているマンションが少なくありません。
ただし、直接大家さんにかけあって交渉したり、猫が禁止される理由として大きな「壁や柱への爪とぎ」と対策する壁紙や柱を覆う布の設置などで、猫が飼えることもあります。
「ペット可」の規約で一匹以上の動物が飼えない場合も同様で、交渉の余地はあります。
マンション(またはアパート)の「ペット相談」というのは、「ペット可」とそれほど変わりがありません。
ただし、「ペット可」の住宅で中型犬が駄目だと言われることは滅多にありませんが、「ペット相談」においては断られるケースがほとんどです。
中型犬がなぜ好まれないのか簡単に説明します。
小型犬は足跡があまりうるさくなく、周囲にあまり騒音を及ぼしません。
また、大型犬は足音が大きいですが、代わりにあまり鳴きません。
中型犬というのは、小型犬と大型犬の騒音を兼ね備えた存在だと見なされています。
ただし、中型犬でも大人しい傾向の高い老犬であれば許可される率が高まります。
また、こちらも「ペット可」のケースと同じく、猫に対しては目線が厳しくなります。
猫は躾がなっていないと、粗相で室内の設備が劣化しやすいこと、猫アレルギーをお持ちの方が多いこと、部屋に傷をつける可能性が高い(と思われている)ことなどで、飼うまでのハードルが高くなっております。
小魚・金魚であっても、飼う場合は事前の申請が望ましいです。
魚の匂いを嫌がる人は少なくありませんし、規約違反に伴う罰金が設定されていることもあります。
賃貸住宅であれば、「ペット規約」に限らず、規約に違反した住人は退去が命じられ、それで終わりです。
ややこしいのは分譲住宅です。
全体所有ではなく区分所有ではあっても、スペースを購入しています。
分譲マンションの規約違反による退去命令は、「区分所有法」にまとめられています。
法律に規定されていると言っても、事例により具体的な法律の運用を見ることができますので、一つ紹介します。
平成6年の東京地方裁判所で、ペット飼育禁止の管理規約の効力・妥当性について裁判が行われました。
被告人は分譲住宅の所有者でしたが、住宅の管理規約「共同生活の秩序に関する細則」に違反しており、小鳥と魚以外の飼育が禁止されているのにも関わらず、犬を飼っていました。
「規約に違反しているのだから、管理者は退去を命じられる」と、無制限に規約の効力をとらえることはできません。
その裁判で、被告人は憲法13条(幸福追求に対する国民の権利)および29条(財産権)により、ペットの飼育は憲法に保証された権利であるとし、土地の所有者と争いますが、被告人は敗訴し、分譲住宅からの退去が命じられました。
根拠としては、たとえスペースを区分所有していたとしても、臭気や鳴き声、毛などの被害は隣人にも及ぶことなどです。
また、例え周囲の人に被害を及ぼさないペットであっても、規約で禁止されていれば、管理者は退去及びペットの飼育をやめることを請求できると判決が出ました。
分譲住宅から退去を命じられた場合、ちゃんと購入費用は返還してもらえます。
ただし、修繕負担(ペット飼育によってもたらされた)や、それ以外の修繕費用を請求される可能性も高いので、あまり得にはなりません。
規約に違反したとしても、直ちに退去が命じられるわけではありませんし、新住居を見つけるための費用を負担してくれます。
ペットの飼育禁止の住宅を決めているのは、主には大家さんです。
後々のトラブルに繋がるケースもありますが、住人が決定した管理規約を無視して、一室だけペットの飼育を許可するケースもあります。
(「大家さんだけペットを飼っている」マンションも少なくありません)
「ペット可」「ペット相談」の住宅も同じですが、ペットを買う場合は敷金や礼金を多めに払うケースがほとんどです。
例外は「ペット共生住宅」で、ペット共生住宅の場合は分譲価格や家賃のうちに、すでに費用が含められています。
大家さんに交渉する価値はありますが、「ペットが嫌いだから、ペット禁止の住宅を選んだ」方がいらっしゃることもあり、あまりオススメはできません。
後々の苦情や、その苦情対応などを考えると、ペット禁止の住宅で、ペットを飼えるかどうかの交渉は厳しいと言えるでしょう。
また、ペットの飼育を想定した住宅は、壁や床に少なからぬ飼い主・ペットに対する気遣いが施されています。
「去勢していない猫は飼育禁止だが、去勢している場合は良い」ケースであっても、「ペット可」あるいは「ペット相談」と書かれていたりします。
マンション管理者・または大家さんに、ルールを直接聞くのが一番確実です。
ペット禁止の建物でもかけあってみる価値はありますが、最近はペットに慣用な分譲マンションも増えているので、他の建物を探すほうが時間やお金のロストが少なくすむでしょう。
分譲住宅であっても、購入者はあくまでも区分所有者であり、全体の所有者ではありません。
事前に規約を確認して、後々のトラブルを避けましょう。